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【獣医師監修】オーストラリアン・ラブラドゥードルの耳のケアについて

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オーストラリアン・ラブラドゥードル(AL)は、実は耳のケアがとても大切な犬種です。
今回はそんな耳の病気やケアの方法についてお伝えできればと思います。しっかり学んでぜひお耳の綺麗な状態を保てるようにしましょう。この記事は、AL事業立ち上げ当初から10年以上、健康管理等ALにトータルに関わっている獣医師が書いています。

ALは耳が悪くなりやすい?

耳の病気で最も一般的なものとして“外耳炎”がありますが、実はALは外耳炎になりやすい犬種であることが分かっています。子犬の頃から外耳炎を発症したケースや、外耳炎を何度も繰り返しているケース等さまざまありますが、まずは理由から探ってみたいと思います。

まず、その理由を考える時に大切なのが先祖犬の存在です。

ALの元となった犬種は何かご存じですか?
現在、ALは次の4犬種が繁殖に使用することが認められております。

  • ラブラドール・レトリーバー
  • プードル
  • イングリッシュ・コッカースパニエル
  • アメリカン・コッカースパニエル

これらの犬種をもとに外耳炎になりやすい理由を順に考えていきましょう。

※先祖犬についてはこちらの記事をご覧ください。

1.耳道内の湿度の上昇

耳の中の湿度が上昇すると耳道内の皮膚がふやけ、これにより感染や炎症が起こりやすくなります。

ALの耳の湿度が上昇する理由として、ALは 【垂れ耳】 であるということです。垂れ耳の犬は立ち耳の犬に比べて通気性が悪いのは想像の通りです。

また、ALにはプードルの血統が含まれるため、耳の中に被毛が生えます。これも通気性が悪くなる原因の一つです。

さらに、ALの先祖犬であるコッカー・スパニエルは耳道内のアポクリン汗腺という組織からの分泌が多い犬種です。アポクリン汗腺からは脂質やタンパク質が含まれている汗が出るため、べたつきやすくなります。

つまり、ALは通気性が悪くなる要因である

①垂れ耳
②耳の中に被毛が生える
③耳の中の分泌過多 

と3拍子揃っており、体の構造上、外耳炎になりやすい犬種と言えます。

2.アレルギー素因

外耳炎になりやすい犬種だからといって、必ずしも外耳炎が発症するとは言えません。実際にALの中でも耳のトラブルがほとんどない子もたくさんいます。

外耳炎は、これらの体の構造に加えて、外耳炎を引き起こす主な原因によって引き起こされます。

外耳炎を引き起こす主な原因は、ミミヒゼンダニ等の寄生虫、異物、腫瘍、そして基礎疾患が挙げられます。

この中の基礎疾患にはアレルギー性皮膚炎や自己免疫疾患等が含まれますが、ALの先祖犬であるラブラドール・レトリバーやコッカー・スパニエルにはアレルギー性皮膚炎(アトピー性皮膚炎や食物アレルギー)が出やすい性質があります。

アレルギー性皮膚炎が関与する外耳炎は他の原因と比較して非常に多いことが分かっています。そのため、ALは体の構造上、外耳炎になりやすく、さらに基礎疾患であるアレルギーが出やすい犬種であるため、外耳炎の発症が多いと考えられています。

※参考
犬の外耳炎とアレルギー性疾患
犬と猫の品種好発性疾患、出版社 : インターズー (2006/6/1)

耳のケアの方法はどうしたらよい?

ALが外耳炎になりやすいということは分かっていただけたと思いますが、では実際にはどのようにケアをすれば良いでしょうか。ご自宅での耳のケアについてALを想定して説明していきたいと思います。

1.ALの耳のケアの方法

【耳の構造】

犬は人と異なり耳が頭部の上の方についています。そのため、鼓膜から耳の入り口までは比較的距離があり、水平耳道から垂直耳道になめらかに移行していきます。

①まずは、耳介部および耳道内の毛の除去をします。はさみと耳毛抜き用の鉗子を用意しましょう。

耳毛抜き鉗子

(1)耳介部のフチの毛をハサミでカットする

(2)耳道内の被毛を毛抜き鉗子で除去する

水平耳道から生える毛の束

(3)すっきり完了

【ワンポイント】
ALの耳に生える被毛は外耳炎になりにくいALの場合は、生えていても特に問題ありませんが、汚れが出やすい子や外耳炎を繰り返している子の場合には、耳垢の除去の妨げになるだけでなく、湿度がこもりやすく細菌の温床になりやすいため、ある程度は除去することをおすすめしています。指で引き抜くこともできますが、油分があるため抜けにくいです。耳毛抜き用のパウダーもありますので、併用することをおすすめします。

他犬種の耳介部写真(耳道内に毛は生えない)
ALの耳介部写真(耳道内からも毛が生えている)

②耳道内にイヤーローションをたっぷり入れ、耳の根元を揉みながら汚れを浮かせて洗浄します。

イヤーローションには、汚れを浮かせて落としやすくする界面活性成分や、その後の細菌の繁殖を抑制する成分等が含まれておりますので、ローションで汚れを溶かすイメージで耳の根元を優しく揉みましょう。

【ワンポイント】
イヤーローションには、アルコールの含まれるものとノンアルコールのものがありますが、ALは被毛を抜いて処理した直後にイヤーローションを使用することも多いことからノンアルコールのものをおすすめしています。

③通常ALは耳にイヤーローションが入っている状態を嫌がり、お耳を振ります。入口に出てきたローションを指が届く範囲で構いませんので、コットン等で優しくふき取りましょう。

【ワンポイント】
耳を振ることで、耳道内の水分が汚れと共に出てきますので、それをふき取って清潔にしましょう。耳の中に残ってしまう水分もありますが、水溶性のイヤーローションは自然と乾きますので、それほど心配はいりません。
また、耳を水分が取れずに気にして床や壁にこすりつけるようであれば、乾いた綿棒をそっと耳道内に入れて、水分を吸収させて取り除いてあげましょう。その際、耳道をこすらないように注意しましょう。慣れないと傷ついてしまうことがあります。

どのくらいの頻度でケアすればよいの?

さて、お耳のケアの方法は分かったと思いますが、どのくらいの頻度でお手入れすればよいのでしょうか?

耳は炎症があると、腺組織の分泌が活発になるため、耳垢が増えます。
耳のケアの間隔は、1週間に1度くらいのケアでうっすら汚れがでるくらいなら問題ありませんが、数日ですぐに真っ黒に汚れてしまう場合には、すでに炎症が起きて治療が必要な場合がありますので、早めに病院受診をしましょう。
また、ほとんど汚れが出ないタイプの子は、頻繁なケアは不要です。

いずれの場合にも、ALは外耳炎になりやすいことを忘れずに、数日おきにお耳をめくって異常がないかどうかの確認することを忘れないようにしてください。その際左右を比べて、以下のような状態の場合は、注意が必要です。

  • 赤く炎症を起こしている
  • ひっかき傷がある
  • 腫れぼったい
  • 熱を持っている
  • 汚れの具合
  • 匂いがきつい

健康な状態のときを何度も見ていると、少しの変化でも気が付くようになります。ぜひ、耳の様子を気にかけ、外耳炎の早期発見に努めるようにしてください。

外耳炎で腫脹している
全体的に赤く炎症を起こしている

オーストラリアン・ラブラドゥードルの耳のケアについて まとめ

今回はお耳のお手入れ方法について、紹介いたしました。お耳の痒みは全身のコンディションにもつながります。アニコム損保さんの保険請求による調査においても、ALはラブラドールレトリバーやプードル同様に外耳炎の割合が年代問わず多いことが分かっています。トリミングの際はもちろんですが、ご自宅でもお耳のケアをすることが、外耳炎の早期発見につながりますので、ぜひ毎日のブラッシングの際にもお耳の状態確認をしましょう。

教えてくれた人(この記事の投稿者)

関根 彰子

獣医師

AL事業を立ち上げた初期から、10年以上ALに関わっている獣医師。
繁殖に関わる親犬や生まれてきた子犬達の健康管理、ALのブリーディングについての助言や調査等トータルに関わっており、ALについての多くを把握している獣医師です。

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