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【獣医師監修】ワクチンって毎年必要なの?

犬にもワクチン接種が必要っていうことは知っているけれど、毎年打つ必要があるのか、シニアになっても必要があるのか等、ワクチン接種について疑問を持っている飼い主さんもいるかも知れません。今回は、初年度に何回のワクチンが必要なのか、その後はどうすれば良いのか等、弊社オーストラリアン・ラブラドゥードル(AL)の場合を例にご紹介したいと思います。この記事は、AL事業立ち上げ当初から10年以上、健康管理等ALにトータルに関わっている獣医師が書いています。

犬のワクチンってどんなものがあるの?

まずは、犬のワクチンの種類についてご説明します。犬のワクチンには大きく分けて、『狂犬病ワクチン』『混合ワクチン』があり、飼い主さんはこの2つのワクチンをワンちゃんに接種させる必要があります。

1.狂犬病ワクチン

『狂犬病ワクチン』については【狂犬病予防法】という法律で以下のように決められています。

・接種対象は、生後91日齢以上の犬

・接種していない、もしくは不明な場合には、犬を取得したら30日以内に狂犬病の予防注射を受ける必要がある。

・年に1回必要で、予防注射の接種期間は毎年4月1日から6月30日までの間。
(3月2日以降に接種している場合はその年の接種とみなされる)

このように法律で対象月齢や接種間隔、時期が決められておりますので、それに沿って接種する必要があります。

狂犬病予防法では、犬の飼育を始めたら、市町村に登録することが義務付けられており、登録の際発行される鑑札を首輪に付ける必要があります。
※ちなみに、新たに改正された動物愛護法によりマイクロチップの装着が義務付けられました。狂犬病予防法の特例に参加している市区町村の場合は、マイクロチップの登録にて鑑札とみなされます。そのリストはこちらから確認できます。

毎年、狂犬病予防接種の強化月間である4月から6月に、各市町村で集団接種が行われており、市町村から登録されている犬を対象に「集団接種のお知らせ」が送付されてきますので、それをうまく利用されるのも良いでしょう。もちろん、動物病院で接種を依頼することもできます。

狂犬病ワクチンを接種したら犬が登録されている市町村から狂犬病注射済票が交付されます。犬の登録をしていなかったり、狂犬病の予防注射を受けさせていなかったり、鑑札を着けなかった者は、20万円以下の罰金が科せられますので注意しましょう。

2. 混合ワクチン

次に『混合ワクチン』についてです。混合ワクチンの接種は法律で義務付けられてはいませんが、犬にとって重大な健康被害となり得る病原体について、事前に免疫を得るために接種するワクチンです。
人でも赤ちゃんの時に非常に多数のワクチンを接種し、大人になってからもインフルエンザワクチンなど、必要に応じて接種していますが犬も同じです。

日本で接種が可能なワクチンは主に以下となります。

1.犬パルボウイルス感染症

2.犬ジステンパー

3.犬伝染性肝炎(アデノウイルス1型)

4.犬アデノウイルス(2型)感染症

5.犬パラインフルエンザ感染症

6.犬コロナウイルス感染症

7.犬レプトスピラ症
(血清型:カニコーラ、イクテロヘモラジー、グリッポチフォーサ、ポモナ、ヘブドマティス、オータムナリス、オーストラリス)

8.犬ボルデテラ感染症

これらのワクチンが接種する『混合ワクチン』にいくつ含まれるかによって、図のように『混合ワクチン “5種”または“9種”』というように呼ばれています。

ワクチンには、感染率と感染後の致死率が高い感染症が対象となる「コアワクチン」(犬ジステンパーウイルスや犬パルボウイルス、犬伝染性肝炎、犬アデノウイルス2型など)と生活環境や居住地域などにより高い感染リスクが想定される犬のみが接種対象となる「ノンコアワクチン」(犬コロナウイルスや犬パラインフルエンザ、犬レプトスピラ感染症など)とがあります。

特に上記1~3のコアワクチンは、多くの混合ワクチンに含まれています。
また7の犬レプトスピラ症は血清型が多数あり、そのうちのどれがいくつ含まれるかによってワクチンの数字が変わってきます。レプトスピラ症は人獣共通感染症で、地域によって発生状況にばらつきがあります。
地域の獣医師に、環境や生活スタイルによって必要がどうか相談し、接種の必要性を確認しましょう。

仔犬の場合のワクチン接種について|ALの仔犬のワクチン接種プログラムの場合

産まれたばかりの仔犬は母犬から譲り受けた免疫、母子免疫(移行抗体)によって感染症から身を守っています。その母子免疫の効力は3~4週齢くらいから徐々に落ち始め、16週齢くらいでなくなると言われています。
そのため、仔犬の場合は、通常はおおよそ8週齢からワクチン接種を開始することで、体内に抗体が作られ免疫力を獲得できるようにします。
また、仔犬の場合、1回だけでは、抗体がしっかり作れない場合があるため、4週程度の間隔をあけて、3回程度接種する必要があります。

しかし、弊社では、さらに早く4週齢から、また3回ではなく4回のワクチン接種を行っています。

そのため、ALをご購入されたオーナーさんの中には、かかりつけの動物病院を受診した際に「ワクチンのタイミングが早い」とか「回数が多い」といったことを指摘されることがあるようです。

疑問を持たれている方のために、何故弊社ではそのような対応をしているのかをお話します。

前述の通り、混合ワクチンは“重大な健康被害を受ける可能性のある疾患に対して事前に免疫を付けるため”のものです。特に犬パルボウイルス感染症や犬ジステンパーは仔犬が感染すると多くの場合死亡してしまいます。

子犬が母犬から譲り受けた免疫力は徐々になくなっていくのですが、失われるスピードは母犬が持っている抗体価(免疫の強さ)によっても影響を受けます。

弊社で取り組んでいるFCHシステムでは、母犬に対して年1回のワクチン接種をお願いしているため、十分な抗体価(免疫の強さ)を維持していると想定しています。しかし、それぞれのご家庭でいろいろな環境下で飼育されていることや、そもそもの母犬の個体差を考えると、仔犬が譲り受ける免疫の強さには差があると考えています。

そのため、全ての仔犬が感染症から守るため、可能な限り早い段階でワクチンの接種を開始するよう努力しています。その努力もあり、これまでにパルボウイルス感染症やジステンパーが犬舎で蔓延したことは一度もありません。

しかし、ワクチンは単純に早期に接種すれば効果的というものではありません。

実は、仔犬がワクチン接種により充分な抗体を作ることができずに失敗に終わる原因が、母子免疫の場合があります。早期すぎるワクチン接種は母子免疫が残っている場合もあり、仔犬が自分で抗体を作れず(免疫誘導)、確実な自己免疫(能動免疫)を付けることができない場合があります。そのため、4回目の最終接種はほとんどの仔犬で、母子免疫がなくなると言われている16週齢以降に実施しています。

ご参考にALを扱う犬舎で実際に実施しているワクチンプログラムを紹介します。

【混合ワクチン】

4週齢時2種混合ワクチン
(犬パルボウイルス感染症・犬ジステンパー)
8週齢時6種混合ワクチン
(犬パルボウイルス感染症・犬ジステンパー・犬アデノウイルス感染症1型/2型・犬パラインフルエンザ感染症・犬コロナウイルス感染症)
12週齢時6種混合ワクチン
(同上)
17週齢時6種混合ワクチン
(同上)

【狂犬病ワクチン】

・16週齢時(112日齢)

【ケンネルコフワクチン】(犬ボルデテラ感染症)

・3週齢時および6週齢時に点鼻ワクチン

※個々の体調やタイミングによって遅れる場合があります。

ワクチンは毎年うたなければならないの?2年目以降のワクチン接種の方法は?

結論から言うと、その後は3年ごとでOKです。

一度確実に免疫を得ることができた場合、コアワクチン(犬パルボウイルス感染症・犬ジステンパー・犬アデノウイルス感染症)については3年以上は免疫を維持することができることが分かっています。
また、近年日本でも、簡易抗体検査キットが承認され、安価で検査が可能になったこともあり、現在は動物病院にて簡易抗体検査を実施の上、抗体価が下がっていないかどうかを確認してから、ワクチンを接種するという方法を取ることも増えてきました。

ワクチンには接種することによる副作用(副反応)もあるからです。

ワクチンによる副作用には、アナフィラキシーショックという非常に強く出るアレルギー反応があります。症状は血圧低下や呼吸困難、虚脱や浅速呼吸、チアノーゼ皮膚症状(顔面腫脹、浮腫、紅斑等)、嘔吐や下痢等の症状が進行し、生命にかかわる可能性もあり、注意が必要です。
その場合には接種後30分以内に発症することが多く、しばらく動物病院にて状態の確認を行うのが安心です。

その他、数時間から半日程度してから現れる元気がない、食欲不振等の症状については、命にかかわるようなショックを誘発することは少なくなりますが、やはりワクチン後1日程度は注意深く観察する必要があります。

ワクチンによる副作用を起こしたことがある場合や、シニア犬で負担を減らしたい等の理由がある場合には、抗体検査を行うことで、ワクチン接種を行うか否かを判断することは適切な方法と考えられます。

ただし、その他のコアワクチン以外のノンコアワクチン(犬パラインフルエンザ感染症・犬コロナウイルス感染症・犬レプトスピラ症)については、確実な防御のために1年に1回の接種が必要となります。それらの必要性も考慮して混合ワクチンの接種間隔を決める必要があります。

また、FCHシステムに参加いただいている母犬については、母犬を感染症から守るためだけでなく、仔犬への母子免疫を確実にする必要があります。そのため、なるべく母犬の抗体価を高く維持することが大切となりますので、年に1回の混合ワクチン接種をお願いしております。

なお、狂犬病ワクチンについては前述の通り、1年に1回の接種が義務付けられております。

ワクチンの費用について

毎年ワクチンを接種するとなると、気になるのは費用です。

動物病院は自由診療のため、地域や病院によって費用が大きく異なりますので、相場としてお話いたします。

まずは狂犬病ワクチンですが、こちらは多くの場合自治体が関与していることが多く、相場は3500円前後です。集団接種の場合は3,000円前後のワクチン接種代に加えて、接種を受けた証明となる「狂犬病予防注射済票」交付の手数料550円が発生します。

次に混合ワクチンですが、こちらは混合しているワクチン数に応じて5種や6種、もしくは8~10種といった複数のワクチンを病院で用意していることが多いです。5種や6種といった少なめのワクチンは6,500円前後、8~10種といった多めのワクチンは7,500円前後が平均的な相場となっております。

詳細はこちらをご確認ください。

接種証明書・抗体検査結果証明書などについて

ワクチンを接種すると、動物病院よりワクチンの 『接種証明書』が発行されます。ドッグランやペットホテル、トリミングサロン等によっては、接種証明書の提示を求められることがありますので、大切に保管しましょう。


また、ワクチンを接種せずに抗体検査を実施した際は、『抗体検査の結果証明書』をもらいましょう。そちらを提出することでワクチンの接種証明書の代わりとできる場合があります。また、紛失してしまった場合には、動物病院に再発行を依頼しましょう。

ワクチンって毎年必要なの?まとめ

今回は愛犬を感染症から守るために大切なワクチン接種の種類や回数等についてお伝えいたしました。ワクチンは副作用も心配ですが、死亡率が高い疾患を防ぐためには不可欠です。特にドッグランや犬の幼稚園等、たくさんの犬と接する機会が多い場合には必ず接種し、愛犬とそこで一緒に遊ぶ、たくさんの友達(犬)を守ってあげてください。

参考文献※世界小動物獣医師会(WSAVA)によるワクチネーションガイドライン(2015年版)

教えてくれた人(この記事の投稿者)

関根 彰子

獣医師

AL事業を立ち上げた初期から、10年以上ALに関わっている獣医師。
繁殖に関わる親犬や生まれてきた子犬達の健康管理、ALのブリーディングについての助言や調査等トータルに関わっており、ALについての多くを把握している獣医師です。

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