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日本でのALのブリーディングについて~仔犬誕生編~

オーストラリアン・ラブラドゥードル(AL)が日本でどのように誕生し、成長していくのかご存知ですか?今回は日本オーストラリアン・ラブラドゥードル協会(ALAJ)の国内唯一の認定ブリーダー、レイクウッズガーデン(LWG)の犬舎で日頃からワンちゃんたちのお世話をしている川島が、交配から仔犬が産まれるまでの過程と、LWGでのブリーディングに関する取り組みをご紹介します。

ファミリーケアホームシステム(FCHシステム)とは?

LWGでは、『ファミリーケアホームシステム(FCHシステム)』というユニークな方法を採用しています。
このシステムでは、ALを一般家庭へお預けし、ブリーディングの時期にだけ犬舎(ブリーディング施設)にお連れいただきます。

通常の犬舎では、親犬はその犬舎内で生活をし、ブリーディングを行うということが一般的ですが、このような形態ではワンちゃんが愛情を十分に受けられなかったり、犬舎の環境によっては心身に悪影響がでる場合もあります。
また、ブリーディングを引退した後に、新しい飼い主(里親)を探したり、新たな生活を家庭犬として始めるためには、様々な環境の変化を受け入れる必要があるため、人にもワンちゃんにも負担がかかってしまいます。

しかし、このFCHシステムならば、ブリーディングの時期以外はFCHファミリーのお家で過ごすため、一般の家庭犬としての生活を送りながらブリーディングを行えます。
これにより、ワンちゃんは家庭犬としての幸せな生活を送り続けることが出来、引退後も同じ家庭で終生飼育されるため、環境の変化によるストレスが少なくなります。
また、愛犬の出産時には、ファミリーの方々も面会にて仔犬の成長や子育ての様子を見守ることができるという素晴らしいシステムになっています。

FCHについて、詳しくはこちら
犬舎について、詳しくはこちら

女の子のヒート確認と交配有無の判断

まずはFCHファミリーのお家で過ごしている女の子のヒート(発情期)を迎えるところから始まります。
女の子を預かっていただいている飼い主さんがヒート出血を確認したら、犬舎にその旨をご連絡いただくようになっています。

※ヒートとは
犬のヒートとは別名【発情出血】ともいわれ、陰部のふくらみや出血を伴う現象です。出血の濃さには個体差があるものの、基本的には陰部にコットンなどを押し当てた時にしっかりと出血が確認できる程度となります。出血は徐々に薄くなっていき、ヒート開始から約10日後に交配適期を迎えます。

ご連絡をいただいた後、相手の男の子を選定します。
男の子の選定をする際には、以下のポイントを考慮しながら交配を決めていきます。

①女の子と近親でないこと。
②遺伝性疾患のリスクが高い組み合わせでないこと1
③女の子と男の子の体格差
④カラー遺伝子などの遺伝情報

  1. LWGでは、親犬に対して全頭DNA検査を実施し、30以上の疾患項目について確認しています。また、股関節形成不全、肘関節形成不全のリスク検査や、その他フィードバックいただいた疾患についてもデータ管理し、それを基として組み合わせの判断材料としています。 ↩︎

交配

無事に相手の子まで決定したら、それぞれの飼い主さんには犬舎へワンちゃんを連れてきていただきます。
連れてきてもらうタイミングとしては、女の子の排卵が行われるヒート開始から10日目に間に合うようにお越しいただきます。

交配の予定日には、誤交配の無いように事前にマイクロチップ番号で対象の子同士であることを必ず確認してから対面させます。
その後、基本的には2頭だけにしてお互いのタイミングで自然に成功できるように見守りますが、上手にできない場合は飼育スタッフがお手伝いすることもあります。

交配が終わった後、女の子はお腹への衝撃に気を付けていただくなど多少の注意事項はありますが、基本的には普段通りの家庭生活を過ごし、出産日が近くなったころに再び犬舎に連れてきていただくことになります。

初対面

出産準備

妊娠中の約2か月間はFCHファミリーのもとで大切に過ごし、出産の1週間前までに犬舎に戻ってきます。

飼い主さんに連れてきていただいた際、お腹があまり大きくない場合など受胎検査が必要な時はエコー検査を実施し、受胎確認を行います。
無事に受胎出来ていることが確認できたら、犬舎での生活がスタートします。
早い子では出産予定日の5日前には出産の兆候が表れる子もいるため、それまでに以下の3つの準備を行います。

  1. レントゲン検査
    レントゲン検査を出産前にすることにより、母体の状態や大まかな仔犬の頭数を確認できます。これは、産まれてくる仔犬の頭数を事前に予測することにより、出産の進行具合を把握するなど、スムーズな出産対応をするために重要です。
  2. 毛を短くする
    身体は10mm、お腹周りは1mmのバリカンで毛を短くしていきます。ALは被毛を長く綺麗に保たれている子が多く、FCHファミリーにも被毛を短くしてしまうことに抵抗を抱く方も少なくないかと思います。
    しかし、出産時は羊水で身体が汚れ、出産後も仔犬の排泄物などで汚れてしまうなど、日常とは異なり衛生状態を保つことが大変難しいです。特にお腹周りは母乳で汚れやすく、また乳首が毛に埋もれてしまうと子犬が乳首を咥えるのが難しくなってしまうため、お腹もバリカンで剃る必要があります。
  3. 平熱を把握する
    出産兆候を見極めるうえで体温の変化はとても重要な要素です。通常、犬の平熱は38℃から39℃前半ですが、出産が近づくにつれ、37℃後半から38℃前半まで下がります。出産の24時間以内になると更に1℃ほど低下します。出産兆候である体温の変化を見逃さないためには、大体1週間前から1日3回(朝・昼・夕)と体温を計り、産前の平熱を把握しておくことが大切となります。

この準備は、お預かりしてから遅くとも出産の5日前までに行います。

産前トリミングの様子

毛刈り前
被毛は比較的きれいに保たれていますが全体的に毛が長めになっています。

毛刈り中
まずはお腹を1mmバリカンできれいに剃り上げていきます。

次に体を10mmバリカンで刈っていきます。

身体が刈り終わったら顔周りや足先も整えていきます。

毛刈り後
全身すっきりして出産の準備は万端です。

出産の流れ

出産予定日5日前になると、1日4回(9時過ぎ、12時ごろ、15時ごろ、18時ごろ)の検温を行い、体温の低下が始まっていないかを確認します。

この時期になると、床を掘ったり、新聞をぐしゃぐしゃにしたりなどの巣作り行動が出るようになる子もいますが、すぐに出産に繋がるという訳ではありません。

体温の低下と出産兆候

体温低下が確認されると出産はもうすぐです。
体温の低下のペースは個体差があり、徐々に体温が低くなってくる子もいれば一気に体温低下が起こる子などその子によって様々です。

体温以外の兆候としては、いつもは元気に動き回っている子が部屋の隅で大人しくしているようになったり、スタッフに対して心細そうな行動をするようになったり、といったすぐにわかる様子の変化を見せる子もいます。

さらに出産が近づくと、今まで巣作りをしていなかった子も巣作りをするようになったり、パンティング(ハァハァと息が荒くなる)が強く出る子や、頻尿になったり便が真っ黒な粘膜状のものになるなどの変化が現れることもあります。

出産の流れ

体温の低下が確認されてから数時間後、ついに出産が始まります。

母犬のいきみが始まり羊膜に包まれた状態で仔犬が生まれてきます。母犬は羊膜を破り、へその緒を嚙み切って胎盤は食べ、仔犬を舐めて綺麗にするというのが出産の一連の流れとなります。

次の子が産まれてくるまでの時間は、前の子を産んで5分と経たずに次の子が産まれることもあれば3時間以上かかってから次の子が産まれてきたりと、その時によって千差万別となっています。

出産後の処理とサポート

一通り母犬の処理が終わった仔犬は、スタッフが身体を拭いて、へその緒の長さを調整し、性別の確認・身体の異常の有無チェック・個体識別用の首輪の取り付け・出生体重測定をして母犬のもとに戻します。

出産時、基本的にスタッフは近くで様子を見守り必要な時には補助するという形をとっています。
例えば、陰部が小さく分娩に時間がかかってしまう場合にはスタッフがいきみに合わせて引っ張ることもあったり、分娩直後何をすればいいかわからずに困っていたり、子犬を怖がって放置する場合には、スタッフが羊膜を破ったりへその緒を切る処理を代わりに行うこともあります。

また、いきみはあるのになかなか産まれずに長時間がたってしまう等、緊急を要する際には帝王切開となる場合もごく稀にあります。

出産後のデータ入力と報告

無事に出産が終了したら、仔犬のカラーや毛質、性別を改めて確認し、情報をデータベースに入力します。このデータベースには、日本で産まれた全てのALの情報を記録しており、カラーやサイズ等の基本情報はもちろん、血統情報や繁殖情報、遺伝子検査の結果や飼い主さんからいただいた疾患情報等多くの情報が蓄積されています。

また、犬舎スタッフからFCH担当へ出産の情報を共有しFCH担当より出産のあったファミリーへ連絡を行います。

産後写真

ALのブリーディング~仔犬誕生編~まとめ

今回は、弊社での交配から出産までの様子について紹介いたしました。

弊社で取り入れているFCHシステムはファミリーの皆様の協力が必要不可欠となります。
FCHのワンちゃんのお預かり中は、ファミリーの皆様に安心していただけるようにお家とは違う環境のなか少しでもストレスフリーにできるようにスタッフも愛情をこめて接しています。
また、一見簡単なように見えるブリーディングも遺伝性疾患が発生しないように血統の組み合わせ等細心の注意を払って選定しております。
そんな、国内ではLWGのみがおこなっているFCHシステムを通したブリーディングの様子を知っていただくことができたなら幸いです。

次回は、仔犬たちが産まれてから飼い主様のもとへ迎えられるまでのケアと取り組みについて詳しくご紹介いたします。

教えてくれた人(この記事の投稿者)

川島 望

茂原事業所 飼育スタッフ

動物系の大学で生態学や行動学を学んだ後に入社。
入社時から飼育スタッフとして多くのALの出産や子育てに立ち会ってきました。
FCHで送り出したALが帰ってきて再会できることが楽しみ。

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