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見た目が似ている?○○ドゥードルとオーストラリアン・ラブラドゥードルの違い

皆さんの中には、ラブラドゥードルやゴールデンドゥードルという犬種を見たり、聞いたりしたことがある方がいらっしゃるかも知れません。また、ラブラドゥードルとオーストラリアン・ラブラドゥードル(AL)はどう違うのか知らない方も多いことでしょう。今回はこれらのいわゆる○○ドゥードルとALの違いについてお話したいと思います。繁殖に関わる少し難しい話になりますが、ALについてより深く知ることができるでしょう。この記事は、ニチイグループのAL事業立ち上げ当初から10年以上、健康管理等、ALにトータルに関わる獣医師が書いています。

ハイブリッド犬として生み出されるさまざまなドゥードル

数年前から日本では、ハイブリッド犬やデザイナーズドッグと呼ばれるミックス犬が流行りをみせています。例えばマルプー(マルチーズ×プードル)やチワックス(チワワ×ダックスフント)といったミックス犬がこれに該当します。そのようなハイブリッド犬はどのように作出されるのでしょうか?

ハイブリッド犬の作り方:親犬 X 親犬=F1

純血種の親犬同士をかけ合わせることで産まれてくる交雑種の一代目は、「F1(エフワン)」と呼ばれます。“ラブラドゥードル”は、ラブラドール・レトリバーとプードルをかけ合わせることで産まれてくるハイブリッド犬で、その一代目は、”ラブラドゥードルF1“と呼ばれます。

これらのハイブリッド一代目(F1)は、親犬の特徴を比較的バランスよく併せ持つ、中間の形で産まれてくることが多くなります。しかしながら、ラブラドール・レトリバーの血統も50%含まれることにより、被毛の抜けやすさが目立ち、体格も大きめの犬が多くなります。

同様に、ゴールデンドゥードルもゴールデンレトリバーとプードルの掛け合わせによるハイブリッド犬です。こちらもプードルによる戻し交配が実施されているミックス犬となります。

※戻し交配とは:交配で作った子孫に対して、最初の親のうち片方を再び交配することをいいます。

最近ではその他にも、シュヌードル(シュナウザー×プードル)やバーニードゥードル(バーニーズマウンテンドッグ×プードル)、カブードル(キャバリア×プードル)やシーパドゥードル(オールドイングリッシュシープドッグ×プードル)等、様々なドゥードルが掛け合わされています。

ハイブリッド犬の作り方:子供1代目(F1)以降の交配

実は、ラブラドゥードルやゴールデンドゥードルは「F1」以外に、「F1b」や「F1b2」といった表記の仔犬を見ることがあります。これらの仔犬はF1よりも世代が進んだ仔犬になります。

“ラブラドゥードルF1”同士をかけ合わせることで、通常であれば2世代目はF2となります。けれども、F2はF1よりも犬種のばらつきが大きくなり、ラブラドール・レトリバーやプードルに偏った仔犬が産まれてくることが多くなります。

そのため、被毛が抜けにくい特徴を強化したり、サイズを小さくしたりしたい場合には、F1同士ではなく、F1にそのような特徴を持つプードルを戻し交配することで望ましい特徴を濃くしていく手法が取られます。このような戻し交配により生まれた仔犬をF1b(戻し交配「back」の頭文字)と言います。

さらに、F1bにプードルの戻し交配が行われると、F1b2になります。このように、プードルによる戻し交配を重ねるごとにプードルの血統が濃くなり、単純計算によるとF1bでは75%プードル、F1b2では87%プードルとなり、見た目も性格もプードルにより近くなっていきます。

一般的にハイブリッド犬は上記のようなしくみで作出されています。

ドゥードルとオーストラリアン・ラブラドゥードル ハイブリッド犬としての違い

では、オーストラリアン・ラブラドゥードル(AL)は、そのようなハイブリッド犬とどう違うのでしょうか?

簡単に言えば、「単純なハイブリッドか、単純でないか?」の違いです。

ALは、親である犬種やF1同士の単純なかけ合わせではなく、6犬種の先祖犬を、長い歴史をかけて、交配や戻し交配を繰り返して作出されてきました。

【ALの開発時に初期に利用された先祖犬は6犬種】

  1. ラブラドール・レトリバー
  2. プードル
  3. アイリッシュ・ウォータースパニエル
  4. カーリー・コーテッドレトリバー
  5. イングリッシュ・コッカースパニエル
  6. アメリカン・コッカースパニエル
①ラブラドール・レトリバー
②プードル
③アイリッシュ・ウォータースパニエル
④カーリー・コーテッドレトリバー
⑤⑥コッカースパニエル

その後、ALの開発には、①②⑤⑥の4犬種のみが許容されるようになり、現在に至っています。

様々な犬種を複雑に重ねることで、毛色やサイズ、毛質もバリエーションが豊富で、個性豊かなALが作出されたのです。これらの豊富なバリエーションや被毛の抜けにくさ、アレルギーフレンドリーな特質などは、単純なハイブリッド犬種では得られないものです。

また、洞察力の高さや攻撃性の低さ、訓練性の高さ等は、ALの開発の歴史の中で洗練されてきたものとなります。

現在では、AL同士をかけ合わせてALが産まれる段階となっており、ラブラドゥードルとは次元の異なる新しい犬種(未公認犬種)であることが分かります。

ドゥードルとオーストラリアン・ラブラドゥードルの違い:目的と理念

犬のブリーディングには資格は必要なく、日本ではまだ海外に比べ、ブリーディング活動についての法整備も細かく進んでいません。

そのため、ただ“かわいくなるかも?”“売れるかも?”と安易な発想でブリーディングが行われるケースがあることも理解しておきたい一面です。また、これらのブリーディングが“ある特定の目的”や“理念”を持って行われているのかは不明です。

一方、オーストラリアン・ラブラドゥードル(AL)は1970年代中頃から、犬アレルギーのある方のための盲導犬として開発されてきたという歴史があります。

つまり、特定の目的をもって開発された犬種なのです。

その後、何年もかけて、目的にかなった、抜け毛が少なく、高い知性と穏やかな性格を持つ現在のALが誕生したのです。

ドゥードルとオーストラリアン・ラブラドゥードルの違い:アウトブリーディングの必要性

ブリーディングは、1つの犬舎の血統だけでは、世代を追うごとに血が濃くなるという問題に突き当たります。

オーストラリアン・ラブラドゥードル(AL)を生んだ本国オーストラリアでは、犬種を保全するためにオーストラリアン・ラブラドゥードル協会(ALA)が設立されました。そしてALAに認定されたブリーダーが、同じ目的や理念のもと、アウトブリーディングを行うことのできる環境を整えました。

アウトブリーディングとは、血が濃くなるという問題を解決するために、複数の犬舎間で全く別の血統のALをブリーディングすることを言います。

ハイブリッド犬の健全なブリーディングは、1つの犬舎だけで長く続けていくのは非常に難しく、同じ品質や管理体制の元、複数の犬舎の協力が必要であるということです。

ドゥードルとオーストラリアン・ラブラドゥードルの違い:ALAによる管理

先にご紹介したオーストラリアン・ラブラドゥードル協会(ALA)に所属する犬舎は、協会の理念や規約に則り、遺伝性疾患の検査や血統の管理をすることが求められています。

日本でも、ALAの理念や規約を守って繁殖管理をすべく、日本オーストラリアン・ラブラドゥードル協会(ALAJ)が設立されました。

ニチイ学館は、ALAJの認定ブリーダーとして登録されており、オーストラリアン・ラブラドゥードル(AL)に必要なすべてのDNA検査や股関節および肘関節形成不全のリスク検査等の遺伝性疾患検査を行うと共に、さかのぼって血統を管理できる仕組みを整えています。

また、オーストラリア現地のグループ犬舎であるSunset Hills犬舎でアウトブリーディングを行っており、その血統を活用し、日本の犬舎の血統のコントロールをすすめています。

このようなことからも、ALという犬種を管理するALAの重要性や、ALが他のハイブリッド犬とは次元の異なる犬種であることがわかると思います。

見た目が似ている?○○ドゥードルとALの違い

いかがでしたでしょうか?○○ドゥードルとオーストラリアン・ラブラドゥードル(AL)の違いについて、ハイブリッド犬としての作出方法や、ブリーディングの目的と理念、アウトブリーディングの必要性、管理団体の存在などの観点からご紹介しました。

純血種のかけ合わせであるハイブリッド犬である〇〇ドゥードルと、目的を持って、長年をかけて開発されたAL。見た目がよく似ていても、実は大きな違いがあることをご理解いただけたのではないでしょうか?

ALに出会えるマッチングサイト

ニチイ学館の抽選販売サイトでは、毎週、新しいAL達を掲載しています。どんな子がいるかのぞいてみてください。閲覧にはまずは こちら からサイト利用申込が必要です。


※ニチイ学館の犬の繁殖・販売事業、グルーミング事業は、2024年3月1日を以て、レイクウッズガーデンへ承継されました。

教えてくれた人(この記事の投稿者)

関根 彰子

獣医師

AL事業を立ち上げた初期から、10年以上ALに関わっている獣医師。
繁殖に関わる親犬や生まれてきた子犬達の健康管理、ALのブリーディングについての助言や調査等トータルに関わっており、ALについての多くを把握している獣医師です。

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